上顎無歯顎に対し、下顎残存歯の咬合面形態修正を伴う上顎全部床義歯製作を行なったことで、咀嚼能力と審美性が改善した症例
症例
義歯で噛めないので噛めるようにしてほしい
診断
・上顎義歯不適合と外形不良に起因する維持不良
・下顎咬合面形態不良に起因する上顎義歯安定不良による咀嚼障害
口腔写真
Before
After
Before
After
治療ポイント
旧義歯は長期間メンテナンスを行わずに使用していたため、粘膜との適合が不良になっていました。また、咬合面は長期間の使用により咬耗し、咬合時に義歯を脱離させるような力がかかってしまっていました。上顎の全部床義歯と同時に下顎の補綴装置も合わせて作り直すことで、噛むことによって安定する義歯の咬合を付与することができ、ナッツやアーモンドなども食べられるようになりました。
大幅に口腔内を治療する場合には、患者さん自身もさまざまな変化に対応しなければなりませんが、実際に経験してみないと許容できる変化と許容できない変化はわかりません。最終義歯(ファイナルレストレーション)の前に治療用義歯(プロビジョナルレストレーション)を作製し、許容できる部分とできない部分を十分に話し合うことによって、患者さんが受け入れやすい最終義歯の設計を計画することができました。
この症例に使用した装置と費用
義歯治療 | 約 1,573,000 円(税込) |
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治療に伴う一般的なリスク・副作用
- 【義歯】
・歯がなくなった部分に着脱可能な人工の歯を装着して治す方法です。全ての歯がない場合を全部床義歯もしくは総義歯、1〜13本の歯がない場合を部分床義歯と言います。
・義歯はリハビリをするための補装具であり、義手や義足と同じ扱いになります。そのため、製作後は使いこなせるようリハビリが必要になります。
・義歯装着後は、義歯が動くことにより靴擦れのような痛みが必ず生じます。
・新しく義歯を製作した場合、3ヶ月程度適応に時間がかかる場合があります。
・義歯が使用可能になった後でも、義歯内面の調整や噛み合わせの調整などのメンテナンスが必ず必要です。メンテナンスを怠ると、歯茎や顎の吸収が早くなり不適合になりやすくなります。 - 【フルマウスリコンストラクション】
・フルマウスリコンストラクションとは、口の一部分だけではなく、全体的に治療を行い、噛み合わせを1から再度作り直していく治療をいいます。
・治療期間の変更:フルマウスリコンストラクション長期間の治療が必要となる場合があります。歯や歯肉の状態、反応、骨の状態、歯の萌出や動きには個人差があり、治療期間が延長することがあります。
・治療の成果:指示された装置を十分に使用しなかったり、口腔清掃の不備、悪習癖の改善努力、予約を守らない方の場合、治療が正常に進行せず、治療期間が長引くだけでなく、治療で良好な結果が得られなくなることがあります。
・治療計画の変更:フルマウスリコンストラクションの治療には複数の手技を平行して行う場合がほとんどです。治療の途中で、治療期間の延長、治療方針の変更、抜歯などが必要になることがあります。
・再発と再治療:フルマウスリコンストラクション後、口腔清掃の不備、歯ぎしり、喰いしばり等の悪習癖の悪化などにより虫歯や歯周病の再発、修復物や歯根の破折が起こった場合、再治療が必要となり別途費用がかかる場合があります。
・歯の痛み:修復物を入れたばかりのときや、治療をした後は歯が浮いたように感じることや、痛みを感じる場合もありますが、通常数日で軽快します。あまりに症状が強く日常生活に支障を来たす場合は早目のご相談が必要です。
・顎関節症は一度発症すると回復が困難になるケースもあります。 - 【金属床義歯】
・強度が高く、入れ歯を薄くしても破折しにくくたわみが少ないです。
・咬合力が著しく強い場合、金属床義歯が破折することがあります。
・歯肉が変化するため、長期的には不適合になります。そのため、継続した調整が必ず必要になります。
・咀嚼することで人工歯が咬耗し、義歯が動くようになったり痛みが生じる場合があります。そのため、継続した調整が必ず必要になります。