臼歯部欠損、咬合支持の低下により前歯部補綴装置の破折を繰り返していた患者に対してセラミッククラウン、インプラントオーバーデンチャーを使用したフルマウスリコンストラクションを行った症例
症例
前歯の被せ物のプラスチック部分の破損が続いている
診断
下顎両側遊離端欠損に起因する前歯部への応力集中よる上顎前歯部レジン前装冠前歯部破損
口腔写真
Before
After
Before
After
治療ポイント
上の前歯の被せ物のプラスチック部分が何度も割れてしまうと来院された患者様です。下顎の大臼歯の欠損を認め、宮地の咬合三角第3エリアに属していました。臼歯部を義歯で補綴はしていましたが、受加圧のバランスの不均衡により前歯に応力が集中し、前歯部のレジン前装冠の破損を繰り返していると診断しました。
そのため、対応策として、下顎をインプラントオーバーデンチャーとすることで受圧要素を高め、上顎前歯部への応力集中を軽減するとともに、上顎の歯冠補綴を咬合平面の修正と両側性平衡咬合を与える形態へと修正することで咬合のバランスを整え、上下の義歯の動きを最低限となるよう調整しています。
下顎前歯のブリッジの支台歯の予後も長期的には見込めないため、同時に治療を行うという選択肢もありましたが、その部分に関しては患者様が保存を希望されたため、今回は見送っています。噛み合わせを全体的に上げる設定としているため、下顎義歯の前歯部をアンレーレスト形態とすることで全体の咬合の調和を図っています。
この部分にメタルのフレームを入れることで、将来ブリッジの脱離時に犬歯を根面板としたときの破折防止の補強構造とすることができ、義歯は再製作ではなく修理を行うことができるように設計を行っています。
この症例に使用した装置と費用
インプラントオーバーデンチャー | 約 2,343,000 円(税込) |
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治療に伴う一般的なリスク・副作用
- 【セラミッククラウン】
・当院ではe.maxとジルコニアを症例に応じて使い分けています。
・e.maxはジルコニアと比較して予期せずチップ・脱離することがあります。
・ジルコニアはe.maxと比較して色調を合わせにくい欠点があります。
・ジルコニアの土台に陶器(セラミック)を焼き付けて色調整等を行う場合(レイヤリング)は、ジルコニア単体の場合に比べて表面の陶器が割れやすいケースがあります。
・神経のある歯を削る場合は神経へダメージを与える可能性があるため、削った後に痛みが出ることもあります。若年者の場合は特に注意が必要です。
・噛み合わせが悪い場合や歯ぎしりがある場合は装着している補綴物が欠ける可能性があります。
・神経の治療をされた歯に対して補綴物を装着する場合で、加重に負担がかかるケースにおいて歯根破折につながる可能性があります。 - 【インプラントオーバーデンチャー】
・インプラントオーバーデンチャーとは、外科手術によって埋入したインプラントを土台にし、その上に義歯を製作する治療法です。
・インプラントを埋入する外科処置が必要になるため、インプラントと同じリスクを有します。
・インプラントを土台にはしますが、最終補綴装置は義歯となるため、ご自身での着脱が必要です。
・インプラントを土台にするためよく噛めるというメリットがある一方で、噛む力強い方の場合は義歯破損のリスクがあります。
・義歯の咬合面は食事によってすり減り、噛み合わせが変化していきます。そのため、定期的な噛み合わせの調整が必要になります。
・義歯の内面は体の経年変化によって歯茎と義歯の間に隙間ができます。そのまま放置するとインプラントへの負担が増加するため、義歯内面と歯茎の隙間を埋める処置が必要になります。
・義歯の修理や内面を合わせる処置には追加費用が必要となります。 - 【金属床義歯】
・強度が高く、入れ歯を薄くしても破折しにくくたわみが少ないです。
・咬合力が著しく強い場合、金属床義歯が破折することがあります。
・歯肉が変化するため、長期的には不適合になります。そのため、継続した調整が必ず必要になります。
・咀嚼することで人工歯が咬耗し、義歯が動くようになったり痛みが生じる場合があります。そのため、継続した調整が必ず必要になります。