歯科訪問診療を行い、義歯製作を行ったことで食形態の改善が可能となった症例
症例
硬いものを噛みたい
診断
体重低下による義歯不適合
口腔写真
Before
After
食形態の変化
多職種による食事観察
在宅での義歯調整の様子
治療ポイント
2021年11月から寝たきり状態で自宅療養されている患者様です。在宅医科クリニック介入当初は食事をとることができず栄養状態が低下していました。管理栄養士の介入により徐々に経口摂取が回復し、刻み食の摂取が可能となりました。しかし、義歯の適合が悪く使用できておらず、それ以上の食形態の向上が困難な状態でした。。ご本人から、固形物を噛んで食べたいと希望があり、当院紹介受診となりました。
口腔内は上下無歯顎で、下顎顎堤の吸収は高度で、総義歯としてはやや難症例でした。口腔の運動機能の低下は軽度で、やや口腔周囲筋の緊張が強いため、義歯製作時の人工歯排列位置に留意し製作を行いました。義歯製作後、数回の義歯調整を行うことで疼痛なく使用が可能となりました。
医科クリニック管理栄養士、ケアマネージャー、介護士とともに食形態向上後の食事観察を行い、問題なく食べられることを共有し、自宅での宅配弁当やショートステイ先での食事の形態を刻み食から一口大へと修正しました。
食事ペースが早く、口いっぱいに入れて食べる癖があることから、窒息リスクの高いもののみ、歯科介入時にペース配分をしながら提供することでお食事を楽しんでいただいています。
この症例に使用した装置と費用
義歯製作 | 約 - 円(税込) |
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※備考 保険診療での受診
治療に伴う一般的なリスク・副作用
- 【嚥下内視鏡】
・嚥下内視鏡検査(VE:videoendoscopic examination of swallowing)とは内視鏡を鼻から挿入し、安静時、嚥下時の咽頭・喉頭を観察するものです。被爆なく長時間の検査ができ持ち運びが可能なため訪問診療でも実地できます。
・まれに鼻出血を引き起こすことがあります。
・まれに消毒薬によるアレルギー反応を引き起こすことがあります。 - 【義歯】
・歯がなくなった部分に着脱可能な人工の歯を装着して治す方法です。全ての歯がない場合を全部床義歯もしくは総義歯、1〜13本の歯がない場合を部分床義歯と言います。
・義歯はリハビリをするための補装具であり、義手や義足と同じ扱いになります。そのため、製作後は使いこなせるようリハビリが必要になります。
・義歯装着後は、義歯が動くことにより靴擦れのような痛みが必ず生じます。
・新しく義歯を製作した場合、3ヶ月程度適応に時間がかかる場合があります。
・義歯が使用可能になった後でも、義歯内面の調整や噛み合わせの調整などのメンテナンスが必ず必要です。メンテナンスを怠ると、歯茎や顎の吸収が早くなり不適合になりやすくなります。 - 【嚥下診察】
・口腔内の診察だけでなく、全身状態、服用薬の確認、食事観察、頸部聴診、必要に応じて嚥下内視鏡検査を行い食事がおいしく安全に召し上がれているか診察を行っています。
・食形態を上げることにはリスクがあります。主治医と相談の上進めますが、食形態向上後、発熱や痰の増加を認める場合には注視することがあります。
・安全な食形態を探すため、必ずしもご本人やご家族のご要望には添えない場合があります。 - 【歯科訪問診療】
・歯科医師や歯科衛生士が通院困難な方の自宅を訪問し診療を行います。
・基本的には全ての治療ができますが、重度の全身状態の悪化の場合は大きな病院を紹介することがあります。
・訪問歯科診療の対象となるのは、「通院困難」な理由が必ず必要となります。