磁性アタッチメントを使用した金属床義歯を併用することで審美障害、咀嚼障害が改善した症例
症例
1年半くらい前に違う歯医者で入れ歯を作ったが合わないので作り直してほしい
診断
慢性歯周炎(広範性,ステージⅣ,グレードC)に起因する歯の動揺と義歯不適合による咀嚼障害
口腔写真
Before
After
治療ポイント
他院で義歯製作を行ったものの不快感により使用ができず、当院に来院されました。口腔内の検査の結果、重度の慢性歯周炎により歯の動揺が大きくほとんどの歯が保存困難な状態でした。治療計画は3つのステージに分けて立案しました。
第一段階は、予後不良歯の抜歯を行い治療用義歯を製作することで応急的に噛んで食べることを可能にする。第二段階は、残存歯の歯周初期治療を行い保存可能な歯を最終確定するとともに、治療用義歯を調整し患者様がどこまで義歯に適応できるか、義歯に対してどのような不満や改善点の要望を持たれるかを共有する。第三段階として、保存可能な歯を利用しながら患者様が治療用義歯に抱かれた不満を改善できるような補綴計画を提案し、ファイナルレストレーションを製作するステージになります。
インプラントによる補綴も選択肢にはありましたが、慢性歯周炎が重度であったことと糖尿病を有することからインプラント周囲炎のリスクを考慮して選択せず、ファイナルレストレーションは義歯で行うこととしました。残存歯に磁性アタッチメントを使用した全部床義歯とすることで、クラスプを使用せず審美性に優れ、残存歯が将来的に抜歯になった場合でも現義歯を調整することでそのまま使用することができるよう設計を行っています。
この症例に使用した装置と費用
審美障害、咀嚼障害治療 | 約 1,045,000 円(税込) |
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治療に伴う一般的なリスク・副作用
- 【義歯】
・歯がなくなった部分に着脱可能な人工の歯を装着して治す方法です。全ての歯がない場合を全部床義歯もしくは総義歯、1〜13本の歯がない場合を部分床義歯と言います。
・義歯はリハビリをするための補装具であり、義手や義足と同じ扱いになります。そのため、製作後は使いこなせるようリハビリが必要になります。
・義歯装着後は、義歯が動くことにより靴擦れのような痛みが必ず生じます。
・新しく義歯を製作した場合、3ヶ月程度適応に時間がかかる場合があります。
・義歯が使用可能になった後でも、義歯内面の調整や噛み合わせの調整などのメンテナンスが必ず必要です。メンテナンスを怠ると、歯茎や顎の吸収が早くなり不適合になりやすくなります。 - 【フルマウスリコンストラクション】
・フルマウスリコンストラクションとは、口の一部分だけではなく、全体的に治療を行い、噛み合わせを1から再度作り直していく治療をいいます。
・治療期間の変更:フルマウスリコンストラクション長期間の治療が必要となる場合があります。歯や歯肉の状態、反応、骨の状態、歯の萌出や動きには個人差があり、治療期間が延長することがあります。
・治療の成果:指示された装置を十分に使用しなかったり、口腔清掃の不備、悪習癖の改善努力、予約を守らない方の場合、治療が正常に進行せず、治療期間が長引くだけでなく、治療で良好な結果が得られなくなることがあります。
・治療計画の変更:フルマウスリコンストラクションの治療には複数の手技を平行して行う場合がほとんどです。治療の途中で、治療期間の延長、治療方針の変更、抜歯などが必要になることがあります。
・再発と再治療:フルマウスリコンストラクション後、口腔清掃の不備、歯ぎしり、喰いしばり等の悪習癖の悪化などにより虫歯や歯周病の再発、修復物や歯根の破折が起こった場合、再治療が必要となり別途費用がかかる場合があります。
・歯の痛み:修復物を入れたばかりのときや、治療をした後は歯が浮いたように感じることや、痛みを感じる場合もありますが、通常数日で軽快します。あまりに症状が強く日常生活に支障を来たす場合は早目のご相談が必要です。
・顎関節症は一度発症すると回復が困難になるケースもあります。 - 【磁性アタッチメント】
・磁性アタッチメントは、義歯側に磁石を、歯やインプラント側に金属を装着することで、義歯の維持力を向上させる構造です。
・比較的維持力が低下しにくいことが特徴ですが、歯肉の吸収により外れやすくなる場合があります。 ・MRIは磁力を利用する装置ですので、同じ磁力を利用している磁性アタッチメントの影響を受けます。MRIを撮影する際は義歯を外してください。
・アタッチメント部に応力が集中するため、義歯や歯が破折する場合があります。 - 【金属床義歯】
・強度が高く、入れ歯を薄くしても破折しにくくたわみが少ないです。
・咬合力が著しく強い場合、金属床義歯が破折することがあります。
・歯肉が変化するため、長期的には不適合になります。そのため、継続した調整が必ず必要になります。
・咀嚼することで人工歯が咬耗し、義歯が動くようになったり痛みが生じる場合があります。そのため、継続した調整が必ず必要になります。