う蝕多発に起因する臼歯部咬合支持が喪失のため前歯部補綴装置の破損を認めた患者に対して、上顎金属床義歯、下顎インプラントオーバーデンチャーを用いて臼歯部の咬合支持回復を強固に行った症例
60歳 女性
- 治療期間
- 6ヶ月
- 費用総額
- 1,639,000円(税込)
症例
虫歯を長い事,放置して奥歯がボロボロ欠けてきた。現在痛みは無いが噛めなくて困っている。
ずっと歯が悪い事は認識していて痛い時期もあったが当時は忙しく放置して痛みも通り越している。どこからどう治療してもらえば良いのか分からない。
診断
う蝕多発に起因する臼歯部咬合支持が喪失による咀嚼障害と前歯部補綴装置の破損
口腔写真
Before
After
Before
After
治療ポイント
歯が悪い時期があり、長期間忙しく放置していたが、いよいよ咬めなくなり困っているとの主訴でご来院されました。
ご自身の歯は臼歯部がう蝕で大きく崩壊し、臼歯部咬合支持は喪失しています。それにより咬合支持は前歯の6本のみになっており、咬合力が集中することで補綴装置の脱離や二次カリエスの問題がで出しており、宮地の咬合三角第二エリアですが、実質第三エリアに崩壊する直前の状態でした。そのため、上顎前歯は現在歯が残っているものの長期予後が見込めず、第三エリアの症例として診断、治療計画の立案を行いました。
抜歯後、固定性インプラントの選択肢もありましたが、治療費の総額を考慮し、インプラントオーバーデンチャーを選択されました。インプラントの埋入部位は、上顎臼歯残存歯の対合に設定し、義歯で最も咬合を受圧できる部位にインプラントを設定しています。剛性を考慮し、上下顎ともに金属床義歯を選択しています。
治療後は義歯も安定して使用することができしっかり咬んで食事ができています、とお話してくださいます。
この症例に使用した装置と費用
インプラント治療 | 約 1,639,000 円(税込) |
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治療に伴う一般的なリスク・副作用
- 【義歯】
・歯がなくなった部分に着脱可能な人工の歯を装着して治す方法です。全ての歯がない場合を全部床義歯もしくは総義歯、1〜13本の歯がない場合を部分床義歯と言います。
・義歯はリハビリをするための補装具であり、義手や義足と同じ扱いになります。そのため、製作後は使いこなせるようリハビリが必要になります。
・義歯装着後は、義歯が動くことにより靴擦れのような痛みが必ず生じます。
・新しく義歯を製作した場合、3ヶ月程度適応に時間がかかる場合があります。
・義歯が使用可能になった後でも、義歯内面の調整や噛み合わせの調整などのメンテナンスが必ず必要です。メンテナンスを怠ると、歯茎や顎の吸収が早くなり不適合になりやすくなります。 - 【フルマウスリコンストラクション】
・フルマウスリコンストラクションとは、口の一部分だけではなく、全体的に治療を行い、噛み合わせを1から再度作り直していく治療をいいます。
・治療期間の変更:フルマウスリコンストラクション長期間の治療が必要となる場合があります。歯や歯肉の状態、反応、骨の状態、歯の萌出や動きには個人差があり、治療期間が延長することがあります。
・治療の成果:指示された装置を十分に使用しなかったり、口腔清掃の不備、悪習癖の改善努力、予約を守らない方の場合、治療が正常に進行せず、治療期間が長引くだけでなく、治療で良好な結果が得られなくなることがあります。
・治療計画の変更:フルマウスリコンストラクションの治療には複数の手技を平行して行う場合がほとんどです。治療の途中で、治療期間の延長、治療方針の変更、抜歯などが必要になることがあります。
・再発と再治療:フルマウスリコンストラクション後、口腔清掃の不備、歯ぎしり、喰いしばり等の悪習癖の悪化などにより虫歯や歯周病の再発、修復物や歯根の破折が起こった場合、再治療が必要となり別途費用がかかる場合があります。
・歯の痛み:修復物を入れたばかりのときや、治療をした後は歯が浮いたように感じることや、痛みを感じる場合もありますが、通常数日で軽快します。あまりに症状が強く日常生活に支障を来たす場合は早目のご相談が必要です。
・顎関節症は一度発症すると回復が困難になるケースもあります。 - 【ロケーターアタッチメント】
・ロケーターアタッチメントはゴムの力によって義歯の維持力を向上させる構造です。
・ゴムの力で維持力を発揮するため、磨耗によって経年的に維持力が低下し、ゴムの交換が必要になります。
・アタッチメント部に応力が集中するため、義歯や歯が破折する場合があります。 - 【インプラント】
・インプラント治療は骨に埋め込む外科処置です。顎の骨が薄い、骨が弱い方はインプラント治療ができないこともあります。
・インプラントのオペ後、唇、舌、頬、歯肉の感覚麻痺が一時的に引き起こされる場合があります。また、近接する歯牙、顎、上顎洞、鼻腔に対しての炎症、疼痛、過敏症、組織治癒の遅延及び顔面部の内出血(紫斑や黄斑など)が手術の成功においても稀におられる場合があります。手術後、3~4日目になると腫れを抑えるお薬の効果が減退するため、術部が腫れてくることがございますが、大抵の場合、1週間程度で腫れは収まってくることがほとんどです。
・歯や骨の状態によって、手術内容を変更することがあります。
・手術中に、予定していた骨の量が足りない場合には、追加の骨造成が必要になる場合があります。 ・喫煙、飲酒は治療結果に影響を与えます。手術前後1週間はお控えください。
・インプラントを長期的に安定させるためには、口腔衛生状態(喫煙の有無、喫煙者の協力度、咬合力、咬み合わせ、骨量、歯肉量、歯磨き、メンテナンス)の維持が必要になります。
・まれにインプラントの手技にかかわらず、インプラントが骨につかない現象が起きる場合があります。 - 【インプラントオーバーデンチャー】
・インプラントオーバーデンチャーとは、外科手術によって埋入したインプラントを土台にし、その上に義歯を製作する治療法です。
・インプラントを埋入する外科処置が必要になるため、インプラントと同じリスクを有します。
・インプラントを土台にはしますが、最終補綴装置は義歯となるため、ご自身での着脱が必要です。
・インプラントを土台にするためよく噛めるというメリットがある一方で、噛む力強い方の場合は義歯破損のリスクがあります。
・義歯の咬合面は食事によってすり減り、噛み合わせが変化していきます。そのため、定期的な噛み合わせの調整が必要になります。
・義歯の内面は体の経年変化によって歯茎と義歯の間に隙間ができます。そのまま放置するとインプラントへの負担が増加するため、義歯内面と歯茎の隙間を埋める処置が必要になります。
・義歯の修理や内面を合わせる処置には追加費用が必要となります。 - 【金属床義歯】
・強度が高く、入れ歯を薄くしても破折しにくくたわみが少ないです。
・咬合力が著しく強い場合、金属床義歯が破折することがあります。
・歯肉が変化するため、長期的には不適合になります。そのため、継続した調整が必ず必要になります。
・咀嚼することで人工歯が咬耗し、義歯が動くようになったり痛みが生じる場合があります。そのため、継続した調整が必ず必要になります。