長期予後が見込めない歯を含む欠損歯列に対して、サイナスリフトを併用して戦略的にインプラント治療を行なった症例
症例
以前から左上と右下に痛みがある。
診断
・上顎左側第二小臼歯慢性根尖性歯周炎
・上顎左側第一大臼歯慢性歯周炎により保存困難
口腔写真
Before
After
Before
After
Before
After
治療ポイント
以前より左側上顎臼歯部に痛みを感じているとお困りの患者様でした。検査の結果、上顎左側第二小臼歯と上顎左側第一大臼歯は重度の歯周炎および根尖性歯周炎による骨吸収が著しく抜歯の適応となりました。歯周炎や根尖性歯周炎を放置すると、顎骨の吸収を引き起こしインプラント治療の難易度が上がることになります。患者様と相談し、難易度は高いもののインプラントによる治療を行うこととなりました。すでに骨の吸収が大きくみられ、インプラントの埋入時に上顎洞への近接が予想されたため、上顎洞に骨補填材を転入することでインプラントの埋入距離を確保するサイナスリフトを行い、6ヶ月経過後にインプラントを埋入しました。
治療計画として、インプラント治療を行う奥の第三大臼歯は長期予後は見込めず、インプラント周囲炎の原因となりうること、咬合支持にそれほど影響を与えないことから抜歯を選択しています。インプラント治療を行う手前の第一小臼歯も失活歯であり、現状抜歯は必要ないものの、長期予後に関しては不明瞭な部分がありました。そのため、欠損部の3歯を2本インプラント埋入のブリッジとするのではなく、3本インプラント埋入としておくことで、第一小臼歯が将来的にトラブルが起きた場合にも近心カンチレバーブリッジへと上部構造のみ修正することで対応できるように戦略的に計画を立てています。
この症例に使用した装置と費用
インプラント治療 | 約 1,771,000 円(税込) |
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治療に伴う一般的なリスク・副作用
- 【インプラント】
・インプラント治療は骨に埋め込む外科処置です。顎の骨が薄い、骨が弱い方はインプラント治療ができないこともあります。
・インプラントのオペ後、唇、舌、頬、歯肉の感覚麻痺が一時的に引き起こされる場合があります。また、近接する歯牙、顎、上顎洞、鼻腔に対しての炎症、疼痛、過敏症、組織治癒の遅延及び顔面部の内出血(紫斑や黄斑など)が手術の成功においても稀におられる場合があります。手術後、3~4日目になると腫れを抑えるお薬の効果が減退するため、術部が腫れてくることがございますが、大抵の場合、1週間程度で腫れは収まってくることがほとんどです。
・歯や骨の状態によって、手術内容を変更することがあります。
・手術中に、予定していた骨の量が足りない場合には、追加の骨造成が必要になる場合があります。 ・喫煙、飲酒は治療結果に影響を与えます。手術前後1週間はお控えください。
・インプラントを長期的に安定させるためには、口腔衛生状態(喫煙の有無、喫煙者の協力度、咬合力、咬み合わせ、骨量、歯肉量、歯磨き、メンテナンス)の維持が必要になります。
・まれにインプラントの手技にかかわらず、インプラントが骨につかない現象が起きる場合があります。 - 【サイナスリフト】
・サイナスリフトとは、上顎のインプラント埋入の際に骨の厚みが足りない場合に用いられる術式です。上顎の顎の骨の上には上顎洞と呼ばれる空洞があり、その空洞までの骨の厚みが薄い場合インプラントの埋入ができません。そのためにインプラント埋入に必要な骨の厚みを骨補填剤を用いながら確保する方法です。
・サイナスリフトと同時にインプラントを埋入できる場合もありますが、同時埋入が困難である場合サイナスリフト後4〜6ヶ月の治癒期間を設ける必要があります。
・上顎洞粘膜の損傷による出血や、インプラントの迷入、感染による骨移植の除去及び再治療、副鼻腔炎や上顎洞炎などの問題を引き起こす可能性があります。
・インプラントのオペ後、唇、舌、頬、歯肉の感覚麻痺が一時的に引き起こされる場合があります。また、顔面部の内出血(紫斑や黄斑など)が手術の成功においても多く見られます。大抵の場合、2週間程度で腫れは収まってくることがほとんどです。
・歯や骨の状態によって、手術内容を変更することがあります。
・手術中に、予定していた骨の量が足りない場合には、追加の骨造成が必要になる場合があります。 ・喫煙、飲酒は治療結果に影響を与えます。手術前後1週間はお控えください。